店舗の造園工事ー地下のお話

目下、取り組んでおります造園工事は、とある店舗さんの改築工事に伴い、玄関周りや駐車場の景観を作るもの。

遅れている建築工事とオープン予定日の狭間でヒーヒー言いながら工程調整をしつつ、出来るところから仕事を進めています。

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個人邸でも商業施設でも言えることですが、造園工事って結局最後の最後なので、いつ着工させてもらえるかは建築工事の進捗次第。

その建築工事って、何故だか大抵遅れるので、コチラの都合通り進まないのはいつものこと。覚悟はしていましたが、今回は道路の拡張工事も絡んでいて、案の上というか、そちらも遅れるでしょ。しかも梅雨末期で大雨だし雷はなるしで諸工事は更に遅れてしまう。

・・・悲惨です。

私や造園工事会社様は、当初の予定に合わせて、材料を手配し人を集めて準備万端なんですが、仕事をさせてもらえない。

「もぅ~~~。知らんで~。間に合わへんで~」

・・・と、頭を抱えたこと、ブチ切れたこと、数知れず。はぁ。

造園関係者なら日常茶飯事的な。いわゆる「造園あるある」みたいな話でした。

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さて。

植栽現場は別会社の駐車場だった場所です。

アスファルトをめくると、砕石層の下にセメント改良層がありました。これは駐車場路盤の安定のためには必要な処理です。でも植栽するには当然不向きなんですね。このまま植えては水は浸透しませんので根腐れする可能性があります。

関係個所を大きく掘り取ってもらうことにし、ついでに土壌検査をしました。

長く不毛であった土地、これからどのように土壌改良をすればよいかの目安になります。

店舗の内装と同じくらい植栽にも心血を注がれているお客様ですので、造園工事にも並々ならぬご関心を持たれています。これから埋もれて見えなくなる部分の情報を共用して、納得して前に進めたい、そんな気持ちもありました。

土壌検査は細かくは色々あるのですが、今回は要の3項目です。

  1. 透水試験:排水不良による根腐れ防止のため
  2. 土壌硬度試験:地盤の硬さによる生育不良を防止するため
  3. ph検査:土壌の酸性度を把握し生育に影響のない状態にするため
透水性を調べる検査。直径15cm深さ20~30cm程(樹種によって変わりますが今回は元々深く掘れているので30cm程)に何回か水を注ぎ、水が浸み込む時間を測ります。
土壌の硬さを調べる検査。硬度計なる測定器具をゆっくりと土に挿して抵抗値を見ます。
ph測定器を地面に挿して測定します。デジタルは簡単ですね。造園樹木ではph4.5~8.0の間であれば問題なし。草花や野菜などは個別な値があります。

3項目を測定し、植栽土壌としていずれも問題ありませんでした。試験結果をレポートにまとめて、このまま使えそうな土壌ですよと報告。

適量埋め戻して、追加する土(客土)には改良を施しまして、植え付けることになりました。

今回は専用機材を使用しましたが、透水試験にはただ穴を掘って水を流し状態を見てもいいですし、硬度計やph測定器はインターネット等で安価に手に入りますので、個人様でも測定できると思います。気になる方は測ってみて改良のヒントにしてみてください。

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今回は地下に埋もれて見えない部分にもうひと技、施しています。

地下支柱です。

3mを超える木を植えた場合、根付きやすくするために支柱を施します。

支柱はとても大切。

支柱をせず木が揺さぶられると、折角伸びた新しい根が切られてしまうことになりかねません。運が悪いと台風や嵐などの強風にあおられ倒れてしまうかも。最近の台風の威力はハンパないですから。

強い風に当たらない場所なら、自力で根を張る方がいいので、支柱は要らないかもしれません。そうでなければ普通は支柱をすることをおすすめしています。

大抵、竹や丸杭などを用いて固定することが多く、何だったら木より目立ってしまうことも。取り付けた支柱が腐る頃には根付いてるので、それまでは付けっぱなしにしていただいています。ですので3年以上は支柱がある状態です。

大事なことは分かるんだけど、見た目がイマイチ。不自然なんですよね。

今回は店舗なので、見た目も非常に大事です。そのお店を訪れるお客様に、非日常的な特別な雰囲気を提供したいとお考えなのに、支柱ばかりが目立ってしまってはナンセンスです。そこで見えない支柱「地下支柱」をとリクエストされました。

根の大きさに合わせた地下支柱の機材。四方から根を挟んで特殊なテープで強固に固定します。そして埋め戻すと、木自体の重さと土の重さも加わり、もうびくともしません。

3m以上の高木がたくさんあるので、全部に地下支柱をするのは大変です。でも、慣れれば竹の支柱とそんなに手間は変らないような印象です。

一度取り付けると取り外しは恐らく出来ませんが、根の成長を阻害しないよう考えられた商品ですから、きっとそのままで大丈夫でしょう。部分的に腐るような素材を採用している地下支柱もあります。

値段は竹支柱の何倍もしますから、誰もかれもとはいきませんが、見た目重視の方にはいい商品ではないかと思います。

地下支柱を取り付け完了。水をたっぷりやって機器が見えないように埋め戻します。

お店を訪れた方は「こんな大きな木、支柱がないのは何故?倒れない?大丈夫かな?」なんて、普通は考えないでしょう。

ただただ自然な眺めを楽しんでいただけるのではないかと思います。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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