湖東の造園外構工事ー石据え編

琵琶湖の東側の地域のとあるお宅の外構工事(エクステリア工事とも言います)と造園工事、2種類の工事が無事終了。お引渡しが出来ました。

その作庭過程の様子は工事中に更新するつもりが、体力不足で出来ず(>_<)

これから振り返りながら作庭記をあと2回ほど書いたのち完成をご覧いただくつもりです。途中、全く関係ない話題が割り込むかもしれませんが、宜しければお付き合いくださいませ。

これからお庭や外構(エクステリア)を作りたいと思われている方、リフォームしたい方の参考になればと思います。

前回のブログでは、エクステリア工事の基礎を作る場面のことを書きました。→コチラ

今日は沓脱石や景石、水鉢、石組など石を据える様子をご紹介します。

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工事は天候に左右されることが多いけれど、この現場ではこれまで雨に泣かされたことがありませんでした。

雨が降るのは決まって工事がお休みの日曜日ばかり。月曜日になると回復し、それから土曜日までずーっと晴天が続いていました。こんなにお天道様が味方してくれることは珍しいかも。お陰様で予定より少し早くお引渡しできました。

石を据えていたのはちょうど桜が満開のころでした。

現場近くにも桜の木があります。満開を迎えたある日、お昼休みにここでお花見しながらランチをしました。

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石を据えるような庭づくりといえば、和風のお庭と思われがちです。

しかし、この頃は自然風のお庭で小さめの石を転がしてみたり、若い方でも枯山水風のお庭が好きな方もいらっしゃっいますので、割と需要はあるのかなと思っています。私の作る庭にも度々石は登場します。ただ昔のように、庭作りと言えば「仏間や客間の縁側から見える前栽」という時代から比べると、石のボリュームが減っているのは違いありません。

今回のお客様は、元のお庭にあった石を、新築された家の庭にも使いたいというご要望がありました。予め調べたところ、沓脱石や飛石、後はほとんど土留め用の石のようでした。

解体されて仮置き状態の石たち。

ご希望を取り入れ、部分的に足りないところは追加したりして、出来るだけお手持ちの石を活かせるように考えたつもりです。

でも既存の石は、前の庭に合わせて持ってこられたもので、それを新しい庭で使うとなると、図面にはアッサリ書けても、実際据えるとなるとかなり難しいものがあります。造園職人さんの技術的センスが問われます。

何トンもある石は重機でないと移動できません。ユニック車やユンボ(バックホウ)で吊って移動させます。安全第一で進めます。画像は沓脱石を移動させているところ。荷台には既存の石、追加の石、混ざって積んであります。これら全部お庭に使いました。

石にも表裏があり、一番よい表情をしている部分を「顔」と呼んだりします。場面によって裏と思わるような面をあえて「顔」にして据えることもありますし、パッとしない石でもいくつか寄せたり、大きな石とバランスを取るために使ったり。そのあたりを考えるのが石を据える醍醐味でもあります。

実際やってみると、両手で持てるくらいの小さな石でも、見場よく据えるのは難しいものです。それが何トンもある石なら尚の事大変で、少し高さを変えるだけでも、重機で吊って土を掘り、また石を下ろして・・・という風になかなか簡単にはいきません。

沓脱石はお客様の使い勝手を優先して配置。無事据わりました。二つの石は高さが違うけれど建物から降りる高さは同じに調整して据えました。

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次は仏間縁側の傍にあった縁先手水鉢です。

新しい家にも和室はあるものの実用的に使かう設計ではありません。そこで眺めのポイントとなるようお玄関先で意匠的に使うことになりました。

和に偏らないよう、目立たない感じで据えて欲しいとのご希望でしたので、思い切って半分ほど埋めてしまいました。

手水鉢もお客様の手持ちの品。据え直してちゃんと水が落ちるか確認しているところ。手水鉢に溜まった水がオーバーフローする時、ひと所から流れるよう口があります。上手く流れるように据えます。

後に鉢の周りに植えた植物が育つと、自然な感じになります。来客時や気分でたまに水を張ったり、花器として見立て花や枝物を活けたりしても素敵です。

ここには軒が掛かっており、雨水が溜まることは少ないでしょう。日々目に付くところろですので、メンテナンスも行き届くでしょうから、恐らくボウフラはわかないのではと思います。

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次は景石。景色をつくるための石、景観を整えるための石です。

お玄関先や門壁の付近にさり気ない存在感を感じさせたくて、いくつか据えるよう設計しました。

ここの石は追加した石で、溶岩石のような渋い石。ゴツゴツと皺の寄った面、色々な石を抱き込んでいる面、そして以外に滑らかな面もあります。どの面を使うのか、職人さんと個性を見極めて据えました。

この場所は、門壁やアプローチが黒やグレーといったモノトーンの空間ですから、黒い溶岩石が上手く調和しました。

お玄関先の坪庭的な場所に1石据えています。玄関側、アプローチ側様々な方向から見て素敵に見えるよう角度が難しいです。でもあまり迷いません。直観で進めていきます。

石を据えるときは元からそこにあったかのように馴染ませたいので、結構深く埋めます。石にも根っこ呼ばれる部分があって、それが地面から出ているとなんだか如何にも置きました的に見えてしまうのです。

深く掘れないところで、どうしても根が見える場合は植物や他の石を添えたりして工夫します。大きな厳つい石でも埋めてしまうと意外とそうでもありません。周りに植物があると更に優しい雰囲気になります。

溶岩系の景石は他にも門壁前に2石。主庭にもお客様の石をいくつか据えました。

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最後に主庭と駐車場を仕切るように設計した石組です。

駐車場からお庭に入れるよう入口も作りました。二つの場所は若干高低差がありますので、低い階段を設けています。階段の両側に一番大きな石を袖壁風に据えたのがポイントです。

主庭への入り口となる部分を作っているところ。駐車場との仕切りも兼ねて低い石垣を作ります。(主庭から駐車場へ向いて撮影)大きな石を据えるのに少し地面を削っています。
主庭と駐車場との仕切り完成。入口となる階段がいい感じに出来ました。既に据えた沓脱石に向かって飛石を打ってもらい庭の枠組みが大方整いました。(駐車場から主庭に向かって撮影)

石を据えるといっても、私は離れてバランスを見たり傍で口出しするだけで、力仕事はほとんどしていません。据えてみて変だったらまたやり直してもらうので、職人さんは大変で、本当に申し訳なく思っています。

力仕事は男性頼みです。重機を使えば男女そう変わらないと思うけれど、細かい部分は手作業になります。私がいくら頑張っても動かせない石でも、男性は軽々と、しかも何回でも動かせるので、やっぱり力の差を感じます。凄い力だなぁと思ってしまいます。自分で出来たら一番いいのですが、こればっかりは仕方がありません。

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宅地であっても景石を据えたり、石で起伏や段差を付けると、庭に自然の風情が出ます。

石はいつもそこに有りますが、同じ場所にあるからと言って、いつも同じ表情をしているとは限りません。

日当たり具合や雨でぬれると、全く違う石のように見えることもあります。

ひとつの石を味わい尽くすのは庭を持つ醍醐味です。

次回は庭の床、地面の仕上げを色々とご覧いただきます。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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