抗えないものの前では

宮城県と福島県で最大震度6強を観測した地震、被災された方々にお見舞い申し上げます。

気象庁の発表で「これは10年前の東日本大震災を引き起こした地震の余震と考えられる」と聞いて、大地震とはこんなに時間が経ってもまだ影響が続くのかと恐怖を感じました。

あれから10年。人は長いと感じますが、地球の時間軸に置き換えてみればきっと短いものなのでしょう。抗えないものの前で、人の小ささ、そして自分の無力さを実感します。

この先大きな余震がないように、そして一刻も早く普段通りの生活が出来ますようにと祈るばかりです。

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抗えないものを前に、自分の意を通そうとすると、まずそれを否定することから入ってしまいます。時に怒りの感情さえ湧いてしまい、心身に良くありません。いい方向に進むはずもないのです。

抗っても何も変わらないといつか分からされ、自らを変える方に歩き始めたとき、ようやく、それはむしろそれで良かったのだと気づきます。

長い道のりです。

私はそういうこと、仕事を通して学んでいる最中です。

造園の仕事は、環境に添うこと、そしてその環境を生かすには?より素敵にするにはどうすれば?と考える仕事でもあります。

地震や台風などの自然災害に備えて想定内の造りは出来ます。想定外のことが起こっても被害が最小限で済むようにと考えます。

でも風の強さも雨の量も、東西南北も入れ替えることは出来ません。建築を変えることも出来ません。もっと言うと、建物の配置や窓の位置、桝の位置、室外機の位置も今さら変えられません。建築の設計段階から関わらせてもらえないことが多いので仕方がないのです。

ディアガーデンのバックヤード。家と庭の設計は同時進行できましたので、室外機やごみ箱、埋め込み水栓などは、道路や庭から見えぬよう、自分も日常生活で出来るだけ見なくて済む場所にまとめて。排水管や桝の位置は植栽を予め考慮して。でも生活必需品だからどうにもできない桝はあります。コンポストや養生中の植木鉢などもこの場所に置くように。
庭の設計途中。この段階では室外機や桝の位置がはっきりしておらず、後に数カ所調整しました。

全て受け入れ、お客様の要望に適うよう、環境に添いつつ、より心地良くするには?

このデザイン、この木、この位置、この商品、この施工と、ひとつひとつの工程を磨き上げて作っていきます。

それがディアガーデンの目指す「用の美」に叶う庭となると思っています。

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植物や土、石を扱っても、庭は自然が作るものとは別物、人工物です。人のための空間だから自然にない安全性や居住性が求められます。

でもひとたび庭に出ると、目線が少し高くなります。遠くなるというか。思わず深呼吸をしたりして、気持ちがすっとします。光や風も感じます。庭は人工物なのに、人は自然の中にいると感じているのです。木々にはそのうち鳥や虫も来て、本物の自然と交わっていきます。

昨年春のディアガーデンのテラスです。狭いながらも木々の囲まれてとてもリラックスできる空間。ここに出るといつも空を見上げ伸びをしてしまう。春が待ち遠しいな。
京都金地院の庭。ここまでくると庭と自然との境は曖昧に。

なんだか矛盾だらけの空間ですね。

だから難しくて。だから面白いのかもしれません。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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