京の美仏と庭めぐり

これまで寺社へは「庭園鑑賞」目的で訪れることが多かったのですが、先日は「美仏鑑賞」という私にとっては新鮮な切り口で、お隣の京都へ行ってまいりました。というのも、珍しく一人ではなく、同伴がおり、彼女が仏像好きだったので。

今日は、この時であった美仏と、窓超しに見る庭園の画像をご紹介します。

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まずは龍谷ミュージアムで開催中の「因幡堂平等寺展」へ。

20体の様々な仏像を鑑賞した中には、なるほど確かにお顔やお姿がひときわ美しい仏像があります。平安時代や鎌倉時代の作られた当時は、どれほど煌びやかだったのでしょうか。それを想像するとさらに凄みが増します。

好みの問題もあるかと思いますが、私は鎌倉時代作・平等寺所蔵の「如意輪観音座像」に見とれてしまいました。ご存知の方も多いと思いますが、頬に手を当て右足を立てて座られた観音像です。こちらは、今まで出会った中でもとりわけ優美な観音様でした。

仏像の多くは文化財指定になっており、当然ながら撮影禁止。画像をご紹介できないのが残念です。

西本願寺の前にある龍谷ミュージアム。色々な視点から仏教芸術を掘り下げておられる。建物もカッコよくて好きな美術館です。

ところで、美術館や博物館などで「○○寺の仏像」という展示があるとき、いつも疑問に思っていたことなんですが、この像に魂って入っているの?運搬展示の際には当然魂を抜く儀式をされるでしょうが、やっぱり抜いたままなの?どっち?

思い切って係りの方に聞いてみました。すると学芸員に確認しますとのこと。しばらく待っていると・・・

展示後ちゃんと法要をして入れています、とのことお答えでした!ということは、毎日お勤めもされているんでしょうか?そこまでは伺えませんでしたが、ただの木像状態の展示も多いそうですから、聞いておきながらびっくりです。平等寺に行けなくとも、こちらでご縁がいただけるのは有難いことではないでしょうか。

そんなことで、手を合わせつつ鑑賞しました。

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さて次は一旦京都駅に戻って、市バスで10分程走ったところにある泉湧寺へ。

「京都傑作美仏大全」という本があって、その巻頭に紹介されていたのが泉湧寺。塔頭寺院あわせるといくつもの美仏が祀られていると紹介されていたお寺なんです。

泉湧寺の門。この門の奥に塔頭寺院、神社、さらに学校など多くの建物と庭があります。造園屋さんの姿があちこちにあり(画像真ん中に立ってる方もそう)剪定に忙しそうでした。

天皇家ゆかりのとても大きなお寺で、神聖な気が漂う境内は、折しも青モミジが見頃です。少しの間だけ降った霧雨が、より一層緑に深みを与えていました。

こちらでは楊貴妃観音像や薬師三尊像はじめいくつもの美仏が祀られていますが、中でも運慶作の本尊・三世仏がものすごーく美しかったです。

天上に描かれた狩野探幽作・雲龍図の迫力もさながら、黄金に輝く仏像三体それぞれが神々しいばかりのイケメンなんです。特に斜め横からみたお顔が!仏像に男女の性はないとか言いますけれど、あえてイケメンと表現させてもらいます。同伴の彼女は涙を流して感動していました。

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とりあえず、美仏のお話はこのあたりでおいて、ここからは庭のお話を。

泉湧寺の塔頭のひとつで、雲龍院のお庭を拝見しました。やはり皇室と深い縁がある故に、高い寺格を持ち、別院とも称される寺院です。

こちらのお寺は庭というより窓が有名。京都にいくつかあるという「悟りの窓」。有名なのは源光庵ですが、ここにもあるのです。

徳川慶喜寄進の石灯篭。砂紋が天皇家の紋章である菊の御紋になってる!
中庭。水鉢にもやっぱり天皇家の御紋「十六八重表菊」が。美しい水鉢ですね~。この下は水琴窟になっていました。凝ってます。観光客の話し声がしなければ、そのままで聞こえますが、付属の竹に耳を当てても聞くことが出来ます。

手入れや掃除が隅々まで行き届いたお庭。サツキの花が色を添えていました。

座敷の窓や障子などの造作がとてもモダン。そしてそこから見える、庭の眺めが本当に素晴らしく、まさに絵か掛け軸かのようです。建物と庭との関係は、かくあるべき!と改めて思う景色でした。

障子が少し開かれて、庭木がいい感じに見えています。
書院の窓が「悟りの窓」と呼ばれる。予想より小さい窓でした。窓ありきの庭、でしょうか。
蓮華の間の障子窓がまた粋で。四角い障子窓から見えるので「しきしの景色」と呼ばれています。座る場所によって全部違う景色にも成り得る。

改めて障子という建具の秀逸さを感じます。ほんのりとした明るさを保ちながら、同時に自由に視界を閉じる(制限する)ことが出来る。だから余計な景色を省きポイントで庭を見られます。カーテンやブラインドと違って、枠がはっきりして、枠そのものにもデザイン性があり、まさに額縁そのもの。故に絵に見えるのですね。しかも季節によって景色が変わる絵、です。

これは寺院だから、という訳でもなく、一般住宅でも取り入れることが出来そうです。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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