処暑のある日 庭で

処暑を迎え、朝夕に秋の気配が感じられるようになりました。日中はまだまだ残暑厳しく、庭に出られる唯一の時間帯は朝夕に限られます。一日の始まりと終わりに、晩夏の庭特有の雰囲気を味わいながら、ほっと一息つくこの頃。

そんな処暑の庭での一日を画像と共におおくりします。

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5:30am

庭が目覚めはじめる時間。

草叢には虫の声。夜明けと共に鳥も鳴き始めて。それにしても、生き物の声はなんて耳に心地良いのでしょう。音が全く無いより、自然の音が少しある方が、静けさが際立つようです。

庭のアロマを取り込むようにゆっくり深呼吸しながら身体を伸ばします。

夜が明けて薄っすらと朝日がかかり始める頃の空気感が好き。テラスの瑠璃柳と共に。

この辺りは、家を建てたときに比べ、徒歩圏内にお店が増えて、より便利になりました。でもそれと引き換えに、車の走行音が、時に神経を逆なでてきます。自分も毎日車に乗るのでお互い様、解っちゃいるけれど。

未だに改造して?わざと大きなエンジン音を轟かせて走る方もいて、その音が心臓に悪いんですよ、ホントやめて欲しい。

窓を閉めてしまえば全く気にならないものの、夏はそうもいかなくて。例外は深夜から早朝にかけて。

目覚めはじめた庭で、静寂を聴けることが癒しです。

9:00am

家事ルーティンをひと通り終えてから庭へ。水遣りついでに、庭の草花を摘んで玄関に活けました。

このごろはザックリ束ねる感じの自然な活け方がマイブーム。花というより葉っぱや枝が中心で、フォルムや色の違いで変化を付けます。庭の景色そのままだから、季節感は工夫せずとも表れて。

真っ直ぐのものは何一つなく、それぞれ向きたい方に垂れたい方に配するだけのアレンジ

花が咲く宿根草や低木のほとんどは、夏前にカットバックしていて、いま咲かせているのは少しだけ。

それらは涼し気な青系のもの。草叢のような花壇の中でわずかに揺れています。

シマススキ、エゴの若い枝、蔓忍、ベロニカ、アジサイ
10:00am

事務所で仕事開始。

ここは建物の北側にあるので、午前中は窓を開けているだけで結構涼しい。風が通り抜け、涼を運ぶついでに、インテリアとして吊るしている風鈴を響かせます。

今日は蝉の声があまりしないな。

おりんのような音色の明珍火箸風鈴。これと同じ画角の動画をインスタグラムに投稿しています。音色はそちらで聞いてみて。
1:30pm

太陽が厚かましく迫ってきます。我慢せずに冷房を付けて。

たまに目を上げて外の緑で目を休めています。庭に出る気にはなりせん。

6:15pm

前庭に夕日が射す頃、事務所を切り上げて庭に出て水遣りをします。涼しい風と水を打つお陰で気温が一気に下がり、とても気持ちいい瞬間。それは植物も同じようです。

「今日も暑かったけれど、何とかしのいだね」

バーベナ・ボナリエンシスの花が盛大にそよぎ肯定します。植物はいつも聞き役に徹してくれるけれど、この花は更に頷いてもくれます。

夕陽を浴びながらそよぐバーベナ・ボナリエンシス。奔放に育っています。

一年草は伸びきっていて、茂みはまさに草叢のよう。木々の葉は、ところどころ陽に焼かれてしまっています。

晩夏の庭を見ていると、いつもヘルマン・K・ヘッセ氏の文章を思い出します。

わずか一年以内に それどころか数か月以内に
芽を出してから死ぬまでの生涯の
前段階を通過する運命を持つ植物や草花は 不思議なものである!

春 私たちはそれらを 子供を観察するように観察し
そのあわただしい成長を 感動的で 愉快で
無邪気であると同時に少し愚かな花の顔を 愉しんで眺める。

―そして突然
晩夏のある日 まだ今まで子どものように思われた花が
謎にみちて それまでとは違った花に見える。
秘密をはらんで ひどく年老いて 疲れた姿になる。それでもなお
花たちはすばらしく円熟し 悠然と 盛衰を警告する見本のように微笑む。

「庭仕事の愉しみ」より

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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