上高地春旅−GICOMA篠田桃紅Collection&宿 編

風薫る皐月を迎えました。ゴールデンウィーク後半の暦はもう「立夏」です。

今年のゴールデンウィークは、まさに夏の始まりを感じさせるような晴天に恵まれました。皆様はどんなふうに過ごされているのでしょう。

私は例によって、夫と温泉&美術館巡りに出掛けました。

温泉とご当地の美味しいもの好きな夫と、美術館や庭園、名建築巡りが好きな私。どの県にも大概どちらもありますから、私達の旅はいつもこのコンセプトで、飽きずに巡っております。

今回は岐阜県と長野県の県境にある平湯温泉に泊まり、上高地まで足を伸ばしました。

平湯温泉までは高速をひたすら走ります。途中休憩がてら、東海北陸自動車道関ICで降り「岐阜現代美術館」に寄りました。ここは昨年(2024年3月28日)に開館したばかりで、世界有数の篠田桃紅コレクションを有する美術館です。

ちょっと変わった立地で、鍋屋バイテックという会社の工園内にあります。おおかた予想はしていましたが、GWにも関わらず閑散としていて、お陰様でとてもゆっくりと鑑賞できました。

2024年3月28日に開館したばかりの桃紅館。すごくモダンな建物で墨色と銀が桃紅作品のイメージと重なります。桃紅さんは岐阜で暮らしたことがなかったそうですが、お父様が岐阜県出身ということで、岐阜には”心のふるさと”という想いを持っておられ、この地に作品を託されたとのことです。

篠田桃紅さんは、書を極められたのち、文字を解体し墨で抽象作品を描くというスタイルを確立。国内外で活躍された方です。2021年3月に108歳でお亡くなりになりましたが、晩年まで筆勢は衰えることはありませんでした。エッセイストとしても有名で、多くの著書を残されています。

この美術館は私にとっては必ず訪れたい場所の一つでした。

研ぎ澄まされた線、緊張感がありつつも懐の深い作品に魅せられたのはもちろんですが、桃紅さんの人間性にもとても惹かれました。お着物を粋に着こなしておられたお姿も素敵でね。

現在、開催中の展覧会です。

今回の企画展は富士山がテーマ。山中湖近くの古い家を移築した山荘で富士山と対峙し生まれた作品が、大小30点展示されています。2階には忠実に再現されたアトリエの展示もあり見応えがあります。

美術品を鑑賞するときは、いつも自分が飾ったり使ったりする様子を想像して楽しんでいます。桃紅さんの作品も自分の傍に置くならどれかな、と探してみたり。ちょっとおこがましい想像ですが、展示品がグッと現実味を帯びて見え、細かなところにも目がいくのでおすすめです。桃紅さんの作品は飾ると何倍も素敵だろうと思います。モダンで思想ある空間になるから。

そういえば、著書「一〇三歳になってわかったこと」の中で、美術館で絵画を鑑賞するときのことを書かれていました。

絵画を鑑賞するときは、解説を忘れて、絵画が発信しているオーラそのものを、自分の感覚の一切で包み込み、受け止めるようにします。このようにして感覚は、自分で磨けば磨くほど、そのものの真価を深く理解できるようになります。

今回の展示の中では「風影 -Landscape- 」という抽象画にとても心惹かれました。その絵の前に立つと指先までピリピリするくらい強い波動を感じます。風吹き荒ぶ木立ちを思わせる絵で、モノクロの世界観に惹き込まれそうになり、いつまでも去り難く見ていました。(夫は早々に去って車の中で待ってくれていました)

引用ついでに最後にもう一つ、桃紅さんのエッセイで私が印象に残ったフレーズをご紹介します。とても大事なことだと私も思うので。

用を足していない時間というのは、その人の素が出ます。その人の実像は、何もしていない状態に表れます。でも、何かをやるときになったら、こういうこともできる、ああいうこともできる、という可能性を持っています。人はいつも何かに対応しているというのでは、一種の機械です。ただ、何かの用を足しているにすぎません。無用の時間、用を足していない時間を持つことは、非常に大事なことだと思います。自然の中にいると、一杯のお茶を飲んでも、ああ美味しいと思えます。「桃紅105歳好きなものと生きる」より

岐阜現代美術館収集品の図録と建築の中の作品が掲載されている図録を購入しました。いつでも手に取って眺められるようリビングの飾り棚に置いて。

さて、今回の宿は「界 奥飛騨」さん。

界は星野リゾート系列の温泉ブランドで、我が家の常宿です。

豊かな自然の中建つ宿。飛騨地方はまだ芽吹き前でした。
昨年オープンした新しい宿なので植栽は成長途中。石積みの塀が素敵。もう少しすると黒い壁面に若葉が生えることでしょうね。

飛騨地方は今ちょうど桜のシーズンで、2度目の花見を楽しめたのは良かったのですが、ここに来て急にくしゃみが止まらず。久しぶりに風邪を引いたのかと思い焦り、何度も温泉に入り養生しました。

でも飛騨を出ると何事もなくおさったので、檜花粉なのか寒暖差なのか分かりませんが、どうもアレルギーだったようです。季節の進みが関西より遅いので仕方がありませんね。

お部屋は曲木をモチーフとしたヘッドボードをはじめ飛騨の伝統工芸を取り入れた造り。
飛騨の名産である曲木細工のワークショップに参加。風呂敷用のバックハンドルを作りました。
飲み物や足湯が楽しめるトラベルライブラリー。ワークショップで作った風呂敷バックを持って訪れました(テーブルの上のが自作のバック。棚にいくつか作品例が展示されています)。意外と持ちやすくて浴衣によく合うので温泉に行く時持っていこうと思います。

年に何回か温泉に浸かると、日常で溜まった疲れや穢れなどが落ちるようで「整う」感じがして?やめられません。

温泉は山の中にあることが多く、ついでに森林浴もできることも楽しみの一つ。

次回のブログでは上高地散策の様子を書きます。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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