吹く風に秋の気配。
窓を開けていると、その風にのって、家のうちそとにある植物から、様々な香りが漂ってきます。
前庭の藤袴からシナモンのような香り、テーブルに活けた秋バラの香り、雨上がりのテラスからはいつもレイランディ(針葉樹)の香りがするのだけれど、それも盛夏とは微妙に違うような。朝に焚いたお香の残り香が部屋の隅にあって突然ふわりと現れたり。
何気なしに部屋部屋を移動していると、ふとそのような香りを感じて、息を深くすることもしばしばです。
大事なことも、気持ちが逸れていると、目には映っても全く見ていなかったりします。音も同じく、耳で感じていても聴こうとしなければ残りません。どちらも無視しようと思えば出来てしまう。
それが、香りにはそのようなことはありません。慌ただしくとも、香りを感じれば必ず気付いて反応してしまいます。その香りの良し悪しで、身体も心も敏感に動きます。
だから自分が普段どのような香りに包まれているかは、結構大事なことなんじゃないかと思っています。
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さて、今日は重陽の節句。
「菊の節句」とも呼ばれます。
年中行事では、その時期の植物の力を借りて邪気を祓うのが習い。五節句だけ挙げますと、元日は松、上巳は桃、端午は菖蒲、七夕は梶の葉や笹、最後を飾る重陽は菊という訳です。
今日は菊の香りを聞くとしましょう。
植物達は、繁殖のために、生存の望みを託して自らを香らせているのです。
この香りは純粋なものの命が溢れ出たもの。