設計見積もり無料問題

業界誌の最新号に「設計見積もり無料問題」についての記事がありました。無料でデザインを得ることが当たり前なお客様が多すぎて、それに業界が合わせている風潮がずっと長く続いているのです。ハウスメーカー様も設計見積もり無料なところが多いので、庭やエクステリアを付属品的に思っておられるお客様だと、そこで有料というのが納得いかないのかもしれません。

設計見積もり無料にすると、デザインが社外にいくらでも出ていき、悪くすると、そのデザインに(工事の)最安値をつけた他の会社に仕事を持って行かれます。それはモラルに反するでしょ!と、この数年業界が問題視しているらしいです。設計料を頂いておれば、その理不尽さもなくなります。ようやく気づいたのって思います。でも「設計見積もりは有料です!」とはなかなか言えないみたいで。

設計料を払ってくださっているお客様のために、一生懸命描いているパースです。

デザイナーはいいデザインをして喜んでいただき、報酬を得るものと思っていましたのに、いざ業界に飛び込んでみると、どの会社様も「設計見積もり無料」でした。当初「自分が一生懸命勉強して努力して得た技術はタダなん?!」と愕然としたものです。無料ということは、全く評価されていないということですよ。そりゃないわー。

でもね、設計見積もり無料というのは、本当はありえません。その会社でお給料をもらっている誰かがやっているのなら、費用が発生している訳です。ではそのお給与は、どこから出ているのかというと、別のお客様からいただいたお金から支払われているのかもしれません。

設計見積もり無料で得したと思って、仮にその会社で工事をしてもらったとしましょう。請求書にはたしかに設計見積もり料という項目はありませんが、経費に含まれています。または全体にうすーくのせられています。契約に至らなかったよその人の設計見積もり料も含まれています。会社を存続するためには、経費+利益が必要なので、当たり前の話ですわーね。

「それって、なんか汚いわー。結局のせてるやん。」「せっかく契約してくれたお客様に悪い気がする。」「それやったら其々の方にもらって、一件づつケジメつけた方がいいやん。」そう思ってしまった甘ちゃんマブチです。

13年前ここ(滋賀県)に引越しした際、ガーデンデザイナーで採用してもらおうと地元の造園会社をいくつか回りましたが、全く相手にされませんでした。「うちはデザイナーなんていらないので。」って言われて落ち込みました。それでもガーデンデザインがしたくてしたくて堪まらなくて「折角の技術を無駄にはしない!雇ってもらえないなら自分でやるしかない!この仕事には価値がある。」と奮起し、自分の事務所を立ち上げたのです。もちろん最初から設計見積もり有料で、です。

見知らぬ土地で実務経験も少なかったのに。いま思うと無謀なことをしたものです。あの頃私は若かった(笑)その時の電話番号が37-4128です。NTTさんからたまたま偶然にもらったのが、語呂合わせでミナ・ヨイニワ(皆よい庭)。神様が応援してくれてる?と勝手にテンション上がってました。分不相応な仕事をもらって、何故か雑誌にもよく掲載されたビギナーズラックな時代です。

ディアガーデンにお問い合わせいただくと、次のようにお伝えしています。

ディアガーデンでは、初めてのお客様に対して初回お打ち合せは無料です(ご指名&県外出張という場合は除いて)。事務所にお越しいただき、ご希望をお伺いしながら簡単な配置図やパースを書き、概算予算をお伝えしています。ディスプレイガーデンや施工例、材料や資料もたくさん見ていただけますので、最初は事務所でとお願いしています。そこで私を評価していただいて、良ければ次のステップへ。現場調査、実施設計へと進みます。ここから有料です。工事まで至らない場合は設計料だけいただいて終わりです。設計料は庭の大きさや施工内容によりますので、初回お打ち合わせの時にお伝えしています。

初回お打ち合せでお断りになられた場合は、私の力不足です。絶対に追いかけるようなことはありません。求められていないので当たり前ですよね。

設計見積もり無料でないことで、実際に訪ねてくださるまでは至らない方もきっといらっしゃるでしょう。それでも、いいのです。

お金を払うと言ってくださったお客様に全力投球したいので。予想を超えるデザインでそのお気持ちにお応えしたいので、時間と頭はそちらに使いたいです。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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