外に出ると、カラッとした空気が心地よく、どこからか金木犀の花の香りも漂ってきて・・・今ぐらいの肌感が一年で一番好きです。
とはいえ、晴れると25度以上になる夏日が未だ続いています。造園の現場では「暑すぎる、もういい加減にして!」と悲鳴が上がっています。半袖も空調服もぜんぜん仕舞えない。もうすぐ11月だというのに。
日本の気候は亜熱帯化していて、4月から9月までの半年間は夏と言っても過言ではありません。それも7月以降は尋常でないレベルの暑さです。専門家によると、今後色々な現象がもっと極端になるらしいです。
とても残念ではありますが、これはもう私が生きている間は、変わらないだろうなと思います。
温暖化が進む日本で、庭はどこどうにつくるべきでしょう?家づくりと並行して考える場合は、建物の配置がとても重要です。今回はその辺りを深掘りして書いていこうと思います。
まずは一般的に好まれる配置で、建物の南側に庭を作るパターン。
ほとんどの方は部屋が明るくなる南にリビングダイニングを配します。「南向き信仰」という言葉があるほどで、部屋の明るさは不動産評価にも大きく関わるそうですから、可能ならそうしますよね。
敷地の南側を開けて建物を配するので、庭を作るならその場になり、採光のために掃き出し窓をつける。そして、掃き出し窓の外にテラスやデッキといった憩いのスペースを作ることも多いです。
が、近年のように半年間ずーっと暑いとなると、果たしてそれが快適なのでしょうか?今夏を経験して、いよいよ疑問に思えてきました。
まず植物にとって、日当たりが良すぎると、在来種は特になのですが、葉焼けしたり、幹割れしたりして、樹勢を落としがちです。根付くまで気が抜けないのです。
ですので、枯れないように日向で育つような植物を植えるようになります。乾燥、頻発する火事、風化した土壌に適応したオーストラリア原産の植物が流行っているのも頷けます。日本の風景がちょっと変わるかも?と危惧するほどです。台湾やフィリピンあたりが原産のシマトネリコは南庭でも枯れることは滅多にありませんが、育ちすぎて手に負えなくなってきています。
南庭では、水遣りの頻度も相当で、水道代と時間が無駄に消費されていきます。そして植えた覚えのない雑草たちだけが妙に元気で、皮肉にもどんどん育ちます。
同じく人間も暑さには弱く、夏は南側の掃き出し窓を遮光カーテンで塞ぐという方も多いと思います。そうすると外(庭)にも出なくなります。テラスがあってもあまり使われません。
また、南庭では、枝を伸ばすのも、花の顔も南に向き。そのため室内から見た時、植物の背中をみるような感じがします。これは実際の植えてみて気づかれる方も多いと思います。
これからの南庭は植物にとっても人にとっても過酷!?
この事実を多くの方に、そして建築設計士さんに知っていただきたいです。
では、どこにどう作れば良いのか?
庭で寛いだり食事をしたりして楽しみたい方、花や紅葉を楽しみたい方は、建物の東側がおすすめ。
東庭は朝が美しいです。午前中日差しが届き、午後の強い日差しは建物で遮られます。花を咲かせるには朝日が当たる方が良いのと、午後の強い日差しと西日を遮られることで株が痛みにくくなります。同時に葉焼けも防げるので綺麗に紅葉します。午後に陰ができるので、人もそこで過ごしやすいという点も良いですね。
外で涼みたい方、眺めがよく落ち着いた庭、また手入れに時間がかからない庭をご希望なら建物の北側がおすすめです。
北庭は1日を通して光が安定していて、在来種の好きな半日陰という状態が保てるところが良いです。雑木の庭を作るのにちょうど良いと思います。成長が抑制されるため、手入れもラクで、雑草も蔓延りにくい。涼しいので座るにもちょうど良くて、室内の光の入り方も落ち着いています。
温暖化著しい現在の庭はどういう陰を作るかがとても重要かと思います。
建物を使って陰をコントロールするのがコツなので、新築の場合は建物をどう配置するか、よくよく検討していただきたいです。できれば私たち造園のプロを、家づくりの最初から関わらせてもらえれば、違った角度からの提案ができると思います。
このブログでも、色々な場面でも、そういうアピールはしているつもりですが、まだまだ力不足です。家づくりの初期段階で関わらせてもらう機会は滅多にありません。
配置も設計も出来上がり、もう何も動かせませんという段階で参加させてもらうかリフォームなので、現状に合わせたものしか作れない。ですので大方が南庭です。
では南庭はどうすれば快適な空間になるのか。
例えば、高い塀を設けるなどして陰を作ります。プライバシー確保にもなりテラスやデッキでも過ごしやすくなると思います。
広いスペースと手入れにかかる費用があれば、森のように木で階層を作ります。木漏れ日の下ならば、植物と人は安らげるでしょう。
オンシーズン中にテラスで寛ぐには、軒を深くしたり、ターフなどで日陰を作る必要があるでしょう。地面は芝で覆うと地表温度は下げられます。芝は非常に手間がかかる植物なので、どなたにもお勧めできるものではないけれども。
雑草のように、時々降る雨だけで生きていけるような植物を選んで植えるのも「手」です。本当は雑草という名の植物はなくて、よく見るとなかなか可愛らしいものです。私も好きな雑草は抜かないで、生かすようにしています。
オランダのガーデンデザイナー、ピート・アウドルフ(Piet Oudolf)さんは、自生する植物や宿根草、いわゆる雑草と呼ばれる植物の美しさをも巧みにデザインに取り込み、持続可能な新しい宿根草の庭を提唱されています。グラス類を積極的に取り入れたり、冬枯れた姿まで愛でるその庭はとてもモダンです。日本の侘び寂びに通じるところもあり、私には魅力的にうつります。
夏涼しく冬暖かい、そんな建築工法は色々あると思います。しかし、外に関しては、気候がダイレクトに影響するため、その変化に上手く合わせていくかしかありません。
建物を利用して光と陰をコントロールしながら、いかに人と植物が過ごしやすい場を作るか。
今日のブログはそんなご提案でした。