坪庭作庭記-石組み編

少し前のことになりますが、

7月の初め、県外某所での造園工事のお引渡しが完了しました。

通常造園工事は建築工事が終わってからスタートする場合が多い中、こちらは未だ建築工事の最中でしたから、常に建築の工程と調整が必要で、精神力や施工監理能力がかなり鍛えられたように思います。

お話をいただいたのは昨年春頃でしたか。設計変更が多く、着工は大幅に延期され、着工後も当たり前のように計画を変更されましたが、その都度誠意を持って対応して参りました。

完成して安堵の気持ちです。ひとまず達成感を味わおうかな。

さて、本日のブログはディアガーデンが担当したエリアの一部「坪庭」を仕上げる様子を2回に渡り紹介します。1回目は石組みとそこに至るまでを書きます。

この場所には、建築設計の方から日本庭園をというリクエストがあり、お客様からは、ご実家から受け継がれた雪見燈籠を使って欲しいというご希望がありました。

建築はラグジュアリーモダンな雰囲気でしたので、日本庭園を少し現代風にアレンジして設計。山深い水景をモダンに昇華させ、建物に添わせる気持ちでお作りしました。

パースは初期にザッと描いたもので、その後平面図の様に変更しました。石組みはあくまで自然に、枯れ流れを瓦と白河砂利でモダンに表現。

雪見燈籠は主に水面を照らす用途があるため、池の脇などに設置されることが多い燈籠です。実際、こちらのご実家でも流れの途中に置かれていましたので、ここはやはりセオリー通り素直に使うのがいいと思いました。

とはいえ、この場所に池を作ることは難しいため、モダンな枯山水をイメージし、瓦を曲線につないで水紋を表現。抽象的ではありますが、これにて水の庭としました。

景石は全て京都産。施工パートナーの仕入れに同行し、このお庭のために選んだものです。

さて、作庭場所が県外というだけで特殊なのですが、建築工事とのタイミングもあって、殆どの材料は初期段階で運び込む必要があり、施工場所がほぼ材料で埋め尽くされてしまいました。樹木は、建築の仕上がり待ちのため半数以上は仮植状態。

そんな手狭な中、地割りと地盤改良を進めてもらい、施工パートナーにはかなりご苦労をお掛けしました。滋賀県の現場ではユニック車やユンボなどの重機を使って重い石や土を動かしますが、こちらでは使えず、ほぼ人力でしたから、時間もかかります。

地盤が整い、建築工事も徐々に進み、いよいよ石を据えたり組むという工程です。

石を据えるには腕力も必要ですが、経験により育まれたセンスがものを言うと思っています。センスなくしては出来ない仕事、まさに職人技なのです。

もちろん図面に沿って作っていただくわけですが、私の意図するところを理解しつつ、更にご自分の知恵を生かしつつ据える。そんな職人さんのデザインも入って、更にダイナミックな自然がギュッと凝縮した景色になったと思います。

燈籠を載せる台石。狭い庭ですが、燈籠をカッコよく見せるために空間を贅沢に使い幅広の石を選びました。苔むした感じが古い燈籠とも合って、ずっと前からここに合ったように見せます。
お客様のご実家にある雪見燈籠を引き取って運び込み据えている場面。私は室内にスタンバイして、スマホを使って職人さんにいい感じにみえる高さや角度を伝えます。
この庭で一番目立つ石。出来るだけ大きく見せたいので立てて使います。背面の壁の塗装が終わるまで、この場所は施工できなくて、待っている間に梅雨になってしまった・・・。

何度も書いて恐縮ですが、場所が狭いのに加えて、汚水や雨水の配管、防犯上のセンサー、更に自分で提案した庭の照明配管や自動散水装置の配管まであります。庭にこんなに色々な菅が集中するのも珍しいことかもしれません。

これらを避ける、もしくは目立たぬように収めるのは至難の業ですが、配線を考え、隠すのも兼ねて石をそれとなく据えてみたり工夫します。ここで手を抜いては庭が自然に見えないので、私も色々と知恵を巡らせる訳です。

高木や低木を植える際も、排水桝を隠すように植えたり、防犯用のセンサーに感知されないように植え位置と樹形を調整しましたが、それも自然に見えるように気を使います。

外構や造園工事では、こういった普段は目にしない、でも暮らしを支えている設備を、目立たないように上手くリカバリーすることを求められます。隠すだけでなく、いざとなったらメンテナンス出来るようにもしなければなりません。

景石が決まったら仮植していたアオハダをようやく定位置に植えられました。チャコールグレーの壁に鮮やかな黄緑が映えますね。足元には千両、寒椿、青木などを植えて。緑が入ると一気に庭らしくなってきました。このあと築山を整え宿根草を植え苔を貼って完成。

植栽デザインは日本庭園というご希望なので、自生種から選択。四季を感じるよう高木は落葉を主に植え、足元は常緑低木や常緑宿根草に加え3種類の苔で締めました。季節によって花も儚げに咲きます。

仮植していた植物を、計画していた位置に植え直し、次は枯れ流れの工程へ続きます。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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