香道体験-寺町・聞香処

お稽古事の行き帰りに歩く京都・寺町界隈。老舗や京都らしいお店が多いので好きな通りです。

その寺町で今春オープンした「聞香処(MONKOUDOKORO)」さん。同じ通りにある鳩居堂さんのお香専門店です。実は建築中から興味津々で、前を通る度に工事の進捗状況をチェックしていました。

「何のお店ができるんやろ?」「へぇー鳩居堂さんのお香のお店か。」「いつになったらオープンするのかな?」「あ、カフェやん♪」ってな感じで徐々に表す姿を楽しみに見ていました。

オープンからひと月たったウィークデーの或る雨の日、お稽古が早く終わったので伺いました。

聞香処さん(※画像をお借りしました。クリックするとリンクのページが開きます)
ミニマムなインテリア。入ると意外にも本店よりも控えめな香りで迎えてくれます。落ち着いた町屋の雰囲気にモダンな白いカウンターが印象的。

入ってすぐのスペースにはお香関係やオリジナル商品、海外のデザイナーさんとコラボした和の器、本店にもあるいくつかの紙製品等が置かれてあります。ゆっくり見せてもらいながら、やっぱり気になるのが奥のカフェスペースです。

カフェには「聞香メニュー」と「お茶メニュー」の2種類あります。折角なので、聞香を体験したくて「沈香」を聞いてみることに。たまたまだと思うのですが貸切状態で、中庭のすぐ傍の特等席に座らせてもらいました。

植栽はシンプルに青竹のみ。雨に濡れて青々としていました。BGMはなくて、雨音が街の雑音を消してくれて、まるで静かさが演出されているよう。庭を見ながら香を聞くのもオツなものです。緑があるのとないのとではやっぱり大違いだなぁと思います。

待っていると、まず電気香炉で焚かれた沈香が運ばれてきました。お店の方が簡単に作法を教えてくださいます。

カウンターの奥には町屋らしく中庭が。通りから見ると薄暗い店内の奥にこの庭がぼうっと見えて素敵です。

沈香の香りは一言でいうと清爽。後で調べますと鎮静効果に優れた香りで、昔、武士たちが戦の前の高ぶる気持ちを静めるために重用したと伝えられてます。

香木ってお線香と同じような香り方と思っていましたら、また違うんですね。もっと柔らかいというか穏やかな感じです。しかも時間が経つにつれ香りの印象が変わって面白いものです。お店の方いわく「こちらの香木はとても上質なものです。その日の温度や湿度によっても変わるんですよ。」

普段親しんでいるエッセンシャルオイルや燃やすタイプのお香は、ここまで鼻を近づけて何度も何度もかいだりしません。空間に漂わせてからかぐのが普通で、聞香のようにかぐと鼻が痛くなりそうです。香木がこんなにマイルドなのも、こんなに小さな断片なのも、かぐではなく聞くと表現するのも、なるほどと納得しました。

香木も空間に香らせることも出来ますが、どちらかというと、パーソナルなもの、そしてひととき味わうためのもの、というところが何か精神的な切り替えに使えそうで興味深いです。

電気香炉だって。片手にいい感じに納まる大きさ、重さ。磁器製で手触りもいい。四角いのが香木です。

お手軽な電気香炉とはいえ、聞き方は同じで、左手で香炉を持ち、右手で鼻を覆うようにしてかぎます。

こうしていると香りに集中できます。鼻先が何となく温かくなって顔の緊張が緩む感じがします。だから微妙な香りの違いにも敏感になるのかもしれません。とても落ち着いた気分になりました。

煎茶セット。器に鳩のマークが可愛らしい。

お茶はご近所の「一保堂」さんより仕入れておられます。あっさりまろやかなお茶にひとくちサイズのマカロン、美味しゅうございました。帰り際、使った沈香を包んでくださいます。家に持ち帰ってほのかな残り香を楽しみました。温めるとまだ香りが立つかもしれませんね。

奥深い香りの世界、またひとつ扉を開けることができました。香炉は幾つか持っているものの、聞香用ではないし、揃えるとなると大変そうです。しばらくは香木を味わいたくなったらこちらにお邪魔しようと思います。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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