久しぶりに行動制限のない夏、とは言え、かなり自分を制しつつ、日光へ行って参りました。
(ちなみに、帰宅後しばらくして受けたPCR検査は陰性でした。今のところ健康状態は良好です)
まずは新幹線で東京を経由し宇都宮へ、それからはレンタカーに乗り換え、日光東照宮など建物を探訪する小旅行です。
実はコロナ前に次の旅行先は日光と思っていたのです。あれから3年が経って、ようやく行けました。
観光地や温泉、地元の美味しいモノなど色々と楽しみましたが、ブログでは敢えて「観光目線ではない」建物探訪記を書こうと思います。
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栃木へ行くと決まって、東照宮の他に「絶対に行きたい」ところと言えば「那珂川町馬頭広重美術館」でした。
建築家の隈研吾さんが手掛けた美術館で、CMの撮影場所としても時々使われているので、ご存じの方もいらっしゃると思います。
ここは栃木県の観光スポットの中でも、かなりマイナーな場所みたいですが、隈さんファンで、美術館巡りが大好きな私にとっては、憧れの美術館。
隈さんの作品なら県内では他に「石の美術館 STONE PLAZA」最近では「宝積寺駅舎」などもあり、美術館なら藤城清治美術館、奈良美智さんのN’S YARDなど心惹かれる場所は多々ありましたが、限られた時間で一つとなるとここなんですよ。
こちらの展示は、栃木県さくら市出身の実業家 青木藤作氏収集による広重の肉筆画や版画をはじめとする美術品が中心です。
木版画は異なる版木を何度も擦り重ねて色や奥行を表現するもの。隈さんはこの美術館を設計するに当たり、地元産の八溝杉による格子(ルーバー)を使って、木版画の工程を建築化した・・・みたいなことを言われています。
2000年竣工とありますので数ある隈さんのルーバー作品の中でも初期の頃ではと思います。
詳しくはコチラ→ 隈建築設計事務所のサイト 馬頭美術館PROJECTのページ
実際、行って見ると、想像していたよりもだいぶ小さな建物でした。
平屋で切妻の屋根、That’all。
思うにこの佇まいは、まるで神社のそれです。
景色の邪魔にならず、かといって溶け込み過ぎる訳ではありません。
存在感は物凄くある。
余談ですが。
こんなに美しいアプローチ↑の目に付くところに、ド派手なピンクのどこでもドアみたいなものが置いてありました。画像左、ミュージアムカフェの入口付近です。(撮影の際、思わず見切ってしまいました)
これははたして展示なのか?SNS用なのか?実際20代らしきカップルが撮影に励んでいましたけど。
正直、悪目立ちしているとしか思えません。嫌悪感すら感じたけれど、こればっかりは人それぞれですしね。
自分をなだめてさらに真っ直ぐ進むと、庭へ出ます。
外観を色々な角度から堪能していると、あっというまに30分程経っていました。
流石に暑くなってきて、企画展「二つの百人一首 《小倉擬百人一首》と《百人一首之内》」を見ることに。
夏休みなのに全く混んでおらず、お陰で久しぶりの浮世絵をゆっくり堪能できました。
庭は裏山を背景に砂利が敷き詰められ、竹が植えられているだけです。これまた神社の参道のようでもあり、お寺の方丈庭園のようでもあります。
おおきな「余白」として存在するこの庭は、中から見ると全く違って見えます。
窓にもルーバーがついていて、それを通して眺めると、ただの砂利の広場に先程見た広重の雨が降っているように見えます。また、屋根のルーバーはモダンな影を映し出し、それがまたレイヤーになっていて・・・と、色々な見え方が楽しめるのです。
建築と庭の素敵なつながり。なるほどです。
こんなに単純なフォルムの建築なのに、見所はたくさんあります。
ブログ読者様にもこの感じ、伝わったでしょうか。
宇都宮駅から1時間以上、だいぶ遠かったけれど、やっぱり来て見て良かったです。
次回は現地で見かけた大谷石の蔵について。日光観光の様子も少し書きます。