先週末のこと、今年最初の展覧会へ行って来ました。
まずは、京都国立近代美術館 開館60周年記念の「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」
美醜を併せ吞んだ女性の生を描いた楠音の絵はとても見応えがありました。これまでも何かで見たことはありましたが、実物はやっぱり迫力違う。アーティストの魂が入った作品からは、精気が立ち上ってくるようです。
童女図/麗子立像を描いた岸田劉生に「デロリとした絵」と評された楠音の美人画は、暗い色調でグロテスク。夜中に見たらトイレに行けない怖い系です。近年、小説家岩井志麻子の本の表紙絵に使用されて、その「デロリ」が再評価されているとか。
楠音はセクシャルマイノリティと紹介されていたので、女性を見る目が、男性とは限らないのでしょう。裸婦像は賞賛でもエロティックでもなく、生々しい。
映画の衣装制作も手掛け、多彩さが際立つ楠音。令和の世だったらもっとグローバルに活躍されたに違いありません。
この日は展覧会をハシゴする予定。次に向かう前に近くの小さな古民家レストランでランチにしました。
軽くワインをいただきつつ、一緒にいった連れと楠音展の感想や近況を話しながら、1時間半ほど寛ぎました。美術館へは一人で行くことが多いのですが、こうして誰かと一緒だと、違った捉え方も出来ていいものですね。
ほろ酔いにもならないくらい、でも何となく楽しい気分になって、次の細見美術館へと向かいました。
ここは私のお気に入りの美術館。大抵空いていて静かなので、心ゆくまで作品を堪能できます。
今回の企画展は、初代 志野宗信没後五百年記念「香道 志野流の道統」
貴重な名香と香りにまつわる美術工芸品の数々が展示されています。
歳をとるにつれ日本の伝統文化全般に興味が増し、その流れでときおり香道にも触れるようになりました。今回の展覧会では、またいくつもの学びを得ることが出来て嬉しかったです。
たとえば、香りが心身に与える10の効能を記した「香十徳」というものがあるとか。感覚を研ぎ澄ませ、孤独をはらい、忙しい時も和ませる。そして多くとも邪魔にならず、少なくても十分香り、中毒性はない、などなど。なるほど、人が良い香りに惹かれる理由が分かります。
香木や香炉がとても軽いものだからか、香道のお道具や調度品などは、はんなりと繊細。美しい蒔絵が施されていたり、飾り金具や組紐飾りなどで飾られて華やかです。どれも一級品ですから本当に見飽きることがありません。
こんな美しくて可愛らしい品々に出会えただけで、嬉しくて、何だか感性が耕され、心がとても豊かになったような感じがします。
国宝や美術館所蔵品をいくら知ったからと言って、もちろん手に入るものではないけれど、もし何か似たようなものを選ぶとしたら・・・の知識がどんどん溜まっていきます(笑)
今年もますます日本の伝統文化にのめり込みそうです。