映画「フラワーショウ!」

庭がテーマの映画を観てまいりました。2002年イギリスのチェルシーフラワーショウにおいて当時最年少で金賞受賞したメアリー・レイノルズの実話をもとにした物語です。

女性ガーデンデザイナーが主役で、世界一メジャーなフラワーショウに挑戦する過程を描いていますが、物語としては、ごくごく単純なサクセスストーリー。レビューは辛口なものが結構多いので、さほど期待せずに、ショウの雰囲気や受賞した庭がどんなふうに再現されているのかを見ようと劇場へ行ったのです。

久しぶりにパンフレット買いました。映画の中で、庭の完成度はすごく高かったです!キャストも物語に合っていましたし。余談ですが、チャールズ皇太子を演じた方が吹き出しそうな程似てた~( ´艸`)

でも見所は別にもあります。原題「Dare to be wild」は自然回帰を促す意。ショウの庭で彼女が訴えたかったことはそこなのです。アイルランドの豊かな自然、人工的装飾的に走るイギリス(一般的な都市)の庭、砂漠化しているエチオピア、様々な場所が出てきます。そこで感じたことや実情を丹念に描いていて、単純なサクセス&ラブストーリーにしたくないという彼女の思いが見えました。アフリカの緑化と水資源開発を行う日本人の活動家、新妻香織さんも名前だけですが物語に出てきます。恥ずかしながら、私は彼女のことをこの映画で初めて知りました。

人は自然の美しさを求めて世界中を旅します。しかし、現代の庭園は自然が本来持っている素朴な美しさを見失っている。この素晴らしい自然が永遠に失われる前に、私たちはそれぞれのやり方で守っていくべきです。(メアリーがフラワーショウ願書に書いた言葉)

現在、イギリスを中心とするガーデンデザインの世界的な流れは、より自然なものに変わっています。貴重な水を無駄使いしないように、乾燥に強いグラス類(ススキのような植物のこと)やワイルドフラワーをメインにした植栽デザインです。それもひょっとして彼女の影響があるのかな?わかりませんが。

アイルランドの自然はスピリチュアルな雰囲気満載。神秘的で力強い。人々は自然に畏敬の念を持って接しています。日本の神社を取り巻く(いわゆるパワースポットと呼ばれているような)神聖な森の雰囲気にどこか似ているなと思いました。それをそのままデザインに生かしたところが、イギリスの審査員の郷愁心に刺さったのだと思います。アイリッシュ音楽がやさしく耳に響いて、とても癒されますよ。

昨年の見た庭映画「ヴェルサイユの宮廷庭師」もそうですが、主役が女性ガーデンデザイナーなので、やっぱりね、思いっきり感情移入してしまいます。

フラワーショウの挑戦の過程は、私自身、毎年埼玉で開催されている日本最大のガーデニングショウ「国際バラとガーデニングショウ」に挑戦したときに似ていて、もう涙なくしては見られない!って感じで。たぶん映画館で泣いていたのは私だけだったろう(笑)ショウに参加する=会場で作庭しなければならないのです。「どうしよう、どうしよう。」と悩む気持ちが痛いほどわかる。

メアリーは「私の庭で世界を変えたい!」とショウに挑みましたが、私は単に自分のデザインがどこまで通用するか、試したくて挑戦したのです。引越ししてすぐ無謀にもディアガーデンを立ち上げたのはいいけれど、仕事もなく、デザインする時間と気力だけはものすごくあって。業績も無いので何とか世間に出て行くきっかけが欲しいともがいてました。そして、応募したデザインが、まさか、まさかで受かってしまったのです。通知を見て歓喜→しだいに不安になる→追い込まれていく という経過は、映画と重なります。

引越ししてすぐなので、メアリーと同じように材料も職人さんも、スポンサーもないないづくし。でも、デザインした庭を会場で作りたい!人々に見て欲しい!という思いは捨てられず。協力してくれそうな方には、応募する事は伝えていましたが、まさか現実になるなんてと驚かれました。そこを頼み込んで色々紹介していただいたり、借りたり、自己資金で足りない分スポンサーを募ったりして、実現できたのです。振り返れば、これも奇跡のような話です。いっぱい無理をお願いしたので、ショウのあとは、仕事で恩を返そうという一心で、苦手な営業もして、結果少しづつ仕事も増えてまいりました。本当に感謝してもしきれない。それを思い出だしたら、泣けて泣けて。

初心を思い出させてくれた映画、見てよかった。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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