夏庭の愉しみ-陰翳礼賛

温室効果ガスによって年々厳しくなってくる夏。

高温に湿度がプラスされ、更にヒートアイランド現象があちらこちらで起こる日本の夏は、いまや世界一暑いらしい。

そんな過酷な日本の夏を如何に心地よく過ごすか???

庭という視点から数回に渡って考えてみたいと思います。

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夏に外にいて恋しくなるのは「日陰」や「木陰」のある場所ではないでしょうか。猛暑の最中、街を歩いていて、木陰に入れたら「助かった~。生き返る~!」なんて思っちゃう。汗がスッと引いて、気持ちが落ち着きます。

実際、公園や街路樹の木陰の気温と、日が当たるアスファルト舗装の道路の気温には、15℃以上もの差があるといいます。木陰が建物の陰と違うのは蒸散作用があるところ。例えるならば、微量のミストシャワーが降り注いでいる状態。だからンヤリと涼しいのです。

庭の場合でも木陰があるのとないのとでは、体感温度がかなり変わってきます。

木漏れ日には癒し効果もあるので、お住まいに木陰を取り入れてみてはいいかがでしょうか?

ディアガーデンのテラスに植えたイロハモミジの木陰。やはり木陰は涼しい!夏は濃い影色が目に入るだけで涼しく感じます。

では、どんな風に植えたらよいか?

夏の住まいを少しでも涼しく感じるようにするなら、窓に近い場所に高木を植えることをお勧めします。

それにより強い日差しを遮ってくれたり、建物を太陽光に晒さないことで外壁の温度上昇を抑え室温の上昇を抑えたりもします。

そして夜になって窓を開けられるようになれば、樹木の間を通り抜け冷やされた風が部屋の中を流れます。

1日の終わりに、窓辺で風に当たりながら葉音を聴いて過ごせたら、リラックス出来そう。

夏の木陰は人だけでなく、植物にとっても心地よいスペースとなります。葉焼けしやすい植物は木の足元に移動させると元気に夏越しできますよ。

同じくディアガーデンにて。西日が当たる場所に植えたアオダモは午後の強い日差しから建物を守ってくれます。アオダモにとっては過酷な場所ですが何とか慣れてくれました。成長がとても遅い木なので建物の際にあっても悪さはしません。
前庭のアオダモは落葉樹。落葉樹ならば冬には葉を落とすので日を遮らず外壁が暖められ室内も暖かくなります。

木陰を得るために、もし1本だけ植えるとしたら、樹冠が大きくなる株立ちの木はいかかでしょう。

目隠しにするならば常緑樹を、それ以外は断然、落葉樹がおすすめです。新緑、花や実はもちろん、紅葉まで年中楽しめますから。

樹種は植える場所によって様々な選択肢がありますので、是非ご相談ください。

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植栽の工夫に加え、室内の温度を上げないためにインテリアの工夫もマスト。

日が当たる窓はカーテンを閉め日差しを取り込まないようにすることが重要です。

カーテンを閉めてしまうと木が見えなくなると思いきや、そうでもありません。

窓外の高木に日が当たれば、枝姿がシルエットとなって目を楽しませてくれます。カーテン素材や日の差し方によって映る映らないはあるかもしれませんが、遮光性でない淡色の無地の布ならばきれいに映ると思います。

ディアガーデンの事務所にて。午後は西日が入ってくるので早めにロールクスリーンを下ろします。すると窓外のアオダモの美しいシルエットが映ります。

新緑や紅葉の眺めもいいけれど、シルエットだけだと水墨画のようにも見えて素敵です。

ざわざわと吹く風に揺れる枝姿は、自然のゆらぎそのもの。見ていて飽きません。

夏の夕方、この窓に椅子を向けてゆったりとリクライニングさせ、この眺めを愉しんでおります。

午前中日が当たる我が家のダイニング。バーチカルブラインドを引くと窓外の木々のシルエットが映ります。これも日時によって天気によって違ってくるのですが、時に感動する程のシルエットが現れます。

窓外にある自然の陰翳やゆらぎは、疲れた脳を癒やし自律神経を整えてくれます。

夏の庭の愉しみは、こんなところにもあるのではないでしょうか。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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