一年で最も暑さが厳しい頃「大暑」を迎えました。
日本の夏を如何に心地よく過ごすか、庭という視点から数回に渡って考えている7月のブログ。
今回は「避暑スタイルのススメ」です。
自宅の庭以外で、夏に心地良い屋外スペースはどこだったか?色々思い出すと、それは避暑地でした。
長野県、北海道、地元滋賀なら比叡山~奥琵琶湖あたり、京都なら貴船のあたり・・・これまで訪れたそれらの場所は標高の高いところで、平地に比べ気温が10℃以上も低い。まるで冷房の効いた部屋にいるようでした。
緑が足元から頭上、更に遠くまで繋がっていて、木陰も多い。だから眩しくなく目に優しいし、肌も焼けない。樹々を渡る風は爽やかで、水がとても冷たくきれい。そこに居るだけで心身ともに浄化されるような心地がしました。
外気温は変えられないけれど、せめてそのような場所をお手本にした庭作りをすれば、猛暑の中、少しは快適に過ごせるのではないでしょうか。
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まずは避暑スタイルのデザインから。
窓から見えるところに、高木~低木~宿根草と上から下まで緑の層を作るように植えます。敷地に奥行がない場合は、高木を生垣に置き換えてください。
ポイントは窓から見えるところを出来るだけ緑にする、でしょうか。
見たくないものが隠れ、様々な葉の重なりが緑陰を作ってくれますし、木があれば鳥も来て囀ってくれます。そこは自宅に居ながらも非日常的な空間となるでしょう。
一年草は夏の間旺盛に咲いてくれ、色とりどりで可愛く元気を貰えますが、その分花殻摘みに手間がかかります。暑い中、庭仕事は極力減らしたいので、ここは潔く宿根草のみにしましょう。
宿根草は、葉や茎が細長いもの、白斑の葉を組み合わせると、同じ緑であっても暑苦しく見えません。
避暑スタイルの庭では緑が中心なので、花はたくさん要りませんが、薄緑や青系の花なら合ってもよいと思います。
避暑スタイルだから、やっぱり優雅に過ごしたい。庭仕事も出来るだけしなくてもいいよう、他の季節にしっかりやっておくことも大事なポイントです。
例えば秋~冬にかけては造園工事をしたり植栽計画をし植えつけ移植、剪定などを。春~初夏かけては雑草取りや切り戻し、害虫対策などを。それぞれの季節にきっちり行うと、夏はほぼ水遣りだけすればいいわけです。自動散水装置を取り入れると更に手間が省けます。
節水でも耐えられる品種や自生種などを植えることも併せて考えたいですね。
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避暑スタイルの庭が出来上がりましたら、その涼し気な雰囲気を存分に愉しみましょう。
ウィークデーは朝の時間がいい。夏は早起きもそんなに苦になりませんから、日が昇るころ庭に出てみましょう。まだ空気はヒンヤリしていて、まさに避暑地にいるような静けさです。
一面の緑に朝日が差して鳥が鳴いて。「今日も気持ち良く目覚めることが出来た」そんな喜びを感じつつ、清々しい空気を思いっきり吸って深呼吸します。(これ、実は私のモーニングルーティンです)
ウィークエンドは庭からいい風を入れてお昼寝。
お昼寝マットといった商品があるそうですよ。
理想はこんな感じかな →俵屋旅館さんのお昼寝スタイル「シエスタ・マット」
小さなものなので、好きな色のリネンで手作りしても良さそうです。
そうして夕暮れ時や夜になると夕涼み。
古より「夏は夜が素晴らしい」と言われるように、また、北欧の地では夏の長い夕暮れ時をブルーアワーと呼び尊ぶように、私達もしばしこの美しい時間を愉しみましょう。
夏庭の愉しみ、3回にわたって考えてみました。
(1回目「夏庭の愉しみ-陰翳礼賛」2回目「夏庭の愉しみ-雨の庭」)
人によって心地よさの基準が違うので、これはあくまでも一例です。
「愉しみ」とは自分の気持ちで楽しいと思えるような状態のことで、「楽しい」が受動的なら「愉しい」は能動的、らしい。
能動的に工夫しない限り、暑い夏を心地よく過ごすことは難しいですね。
身体の声をよく聞いて無理をせず、素敵だな心地いいなという場面を意識的に見たり取り入れたりして愉しむことで、今年の夏も違ってくるのではないでしょうか。