男女問わず蜘蛛嫌いな人は多い。聞くと、とにかく気味が悪いとのことです。
毒蜘蛛ならいざ知らず、その辺をちょこちょこ歩いている蜘蛛ならば可愛いとすら思うし、私にとっては、庭づくりには欠かせない存在。大好きではないけれど、蜘蛛にはとても親近感があります。
そんな蜘蛛づくしの本を読んでみました。
「クモの奇妙な世界 その姿・行動・能力のすべて」(馬場友希著)です。
いつも思うのですが、嫌いな相手でも、その相手のことをよく知れば、マイナスの感情は減るものです。だから蜘蛛嫌いの方にもお勧めしたい本です。
蜘蛛の起源は古生代デボン紀~石炭紀の間と考えられており、原始的なハラフシグモ科の蜘蛛は、なんと!3億年近くも姿かたちを変えていないのだそう。
世界には現在、119科4140属、4万8000種強の蜘蛛が知られています。未知なる種はまだたくさんおり、現在もどんどん新種が発見されています。近い未来5万種は超えるに違いありません。
とんでもない数です。
蜘蛛は中間捕食者ですから、数や種類の豊富な環境というのは、生き物全体の豊かさを表していることになるのですね。
彼らの変わった生態も面白く読みましたが、私がこの本で最も注目したのは、
蜘蛛は益虫、農作物のボディーガードと言われるワケは、必ずしも害虫を食べるからだけではない、ということです。
〇蜘蛛はただいるだけでいい。
害虫が蜘蛛に食べられることを恐れて、植物を食べる活動を控えるという現象が確認されています。
蜘蛛がいることで、害虫の行動を変え、結果的に害虫の死亡率を高めるという例も知られています。
〇蜘蛛の巣の「糸」の存在が重要。
蜘蛛の糸が付いた葉の方が、害虫に食われる量が減ることが明らかになっています。蜘蛛は移動時、常に命綱を引きながら歩いているので、たくさんの蜘蛛が農地を動き回ること自体が、害虫による作物被害の軽減に一役買っているのです。
蜘蛛の中には、移動時に、網を回収せずそのまま残していく種がおり、網は主がいなくなってもしばらく残り、虫を捕殺するトラップとして機能し続ける。
以上のように、蜘蛛は害虫を直接食べるだけでなく、害虫の行動を替えたり、害虫の群れを攪乱したり、あるいは網という防虫ネットを仕掛けることによって、害虫の数や活動性を押さえ、結果的に農作物を害虫から守っていると考えられます。
蜘蛛の糸の存在がそんなに影響しているとは知りませんでした。
これらはもちろん人間のために行っているのではありません。
でも、私達はこの蜘蛛の習性や行動を理解し、うまく利用するというか、役に立ってもらうことは出来ますね。