6月の施工現場より

6月初めに着工した現場について、途中経過をレポートします。

こちらは近江八幡市内にある観光地「八幡堀」に隣接する店舗のお庭。主に駐車場として利用されていた場所を改修します。

ディアガーデンから程近い近江八幡市の観光地「八幡堀」の風景です。安土桃山時代に秀吉の甥豊臣秀次の八幡山城居城のもと、城下町が栄える基礎となった町の一大動脈。堀に沿って白壁の蔵や旧家が立ち並ぶ風景は、時代劇のロケ地になるほど。四季折々の風情があり観光客が絶えません。

上の画像を見てお分かりいただけるように、八幡堀は、水の流れに沿って自然石が延々と積まれたり敷かれたりして、昔ながらの景色を保っており、地元でとても大切にされている場所です。

その堀に面するお庭ですから、店舗としての個性を出しながらも、景観に馴染むように設計しました。

本工事のメインは植栽工事で、石工事と設備工事(照明、水道)が少々。私共は部分的に整えるのみに留まり、あとはお客様自身で時間をかけて全体を仕上げていかれるそうです。


本来、植栽工事は秋以降に行うのがベストですが、急がれる場合は梅雨入り前後に行います。

木の新芽がおよそ固まっているころで、植え付け後に梅雨の雨をたっぷりもらえるのがメリット。デメリットは梅雨明け後の水管理の大変さかな。まだ根付いていないので、初めて大きな木を育てるという方にとっては難題でしょう。根にちゃんと水が届くように水鉢を切っておきました。

ディアガーデン 馬渕律子

水鉢を切るとは?
木の根の周りに沿って土手を作って囲むことを言います。水をやった時、根元に水が溜まりゆっくり浸透することで根付きやすくなります。

さて今年の梅雨入りは、植え終わってから3日後。21日でした。

観測史上かなり遅い梅雨入りのおかげで、植栽後の石工事が捗りました。

植栽後の石工事の様子。背景に見えている木々は本工事で植えたものです。

こちらのお庭には井戸があります。(上の画像奥に見える四角い枠の中)

井戸水を散水に利用しつつ、景観のアクセントにしたいとのことで、実用的なポンプを井戸の裏側に仕込み、目立つところには可愛らしい手押しポンプを設置します。

また、お客様のご希望で、井戸枠を新たに作成し、蓋も新調することになりました。井戸枠に貼った材は自然石をスライスしたもの。元の井戸枠がかなり大きかったので、これ以上大きくしないよう配慮して選んだ材です。前石の材は元々このお宅にあった石を据え直しました。

石積み用の石を選びに。今回は福井県の疋田石を使います。ずっと昔からある石ですが、今は採れなくなったと石屋さんがおっしゃってましたので貴重な石になったのですね。

切石でない限り、形はまちまちなのが自然石。それがいいところでもあり、石積みや石貼りなどの施工を悩ませるところでもあります。

今回は、自然石を積み上げた小さな花壇枠を1箇所設けるのですが、材料の石はそこに使う何倍もの量が必要になります。

崩れないように積むためには、上下左右の石同士の形が合わなければなりません。加工すればいいじゃないかと思われるでしょうが、人工的な切り口になるので不自然に見えて美しくない。なるべくそのままを活かして積みたいわけで、選るためにいろいろな形の石がたくさん必要になります。

非常に贅沢な作り方です。

疋田石の野面積みによる自然な感じの花壇枠ができました。野面とはいえ、ちょっと綺麗めに積んでもらいました。ここに植物が入るといい感じになりそうです。

設計者として職人さんにこのような感じで積んで欲しいとは伝えました。

しかし職人さんもそれを重々理解しつつも、やってみないと分からないというのが現実。私としては、彼を信じて、技を存分に発揮してもらえるよう材と状況を整えるのみです。

曲線部分が上手く表現され、細かく積んだ部分と大きな石とのバランスもよく、とてもいい感じに仕上がりました。今回は4mほどですが、せめてあと倍ほどあると、この良さがもっとわかっただろうなと思います。

来週以降、照明と水道工事をしまして、ひとまず完成です。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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