坪庭作庭物語1-石組み

先週9日から作庭しておりました京都市山科区にある「ゆる音家」さんのお庭が完成しました。

ゆる音家さんは、風情ある町家でパスタや甘味がいただける女性に人気のお店です。内装を一部を直されるのに合わせて、坪庭の改修をご依頼くださいました。

オーナー様の掲載許可が下りましたので、今日からその作庭の様子を3回にわたってご紹介します。

作庭中は猛暑日続きで、職人さんにはご苦労を掛けましたが、とても丁寧な仕事をして下さったお陰で上手くまとまりました。そんなディアガーデンの庭作りをじっくりご覧いただこうと思います。よろしければお付き合いください。

  • 1回目:石組み
  • 2回目:植栽
  • 3回目:竹細工と照明

3回書き終えた頃に、ブログ掲載とは違う画像で施工例をUPしますので、そちらも是非ご覧くださいませ(^^

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さて、坪庭作庭物語1回目は、庭の骨格を作る石についてのあれこれ。

お庭は客席のある部屋に面する幅2.7m奥行4m程のミニマルな空間です。オーナー様のご希望は、石や灯籠・手水鉢などを出来るだけ生かして作り直して欲しいとのことでした。

そこで、手水鉢や灯籠はあるべきところに据え、更に日々のメンテナンスをやりやすくするために庭の中をスムーズに歩けるような石の使い方を提案しました。飛石や延段、霰こぼしなどは景色づくりにもなります。いわゆる用の美、ですね。

改修前の坪庭の様子。実生の木々がすくすくと育ち、手入れが追い付かない様子。手水鉢や灯籠もそれぞれ2つづつあり余白が少なめでした。

木塀に囲まれているので、資材の出し入れが大変でしたが、作業効率を優先し、除けられるものは全て一旦外に運び出すことに。

そしてある程度整理できたところで、奥の大き目の石から、順に据えていきます。

とにかく作業スペースがなく重機を入れるのも困難。2人でも動かせない大きさの石にはチェーンブロックが大活躍です。

主だった石はどのように使うか予め決めていましたが、それ以外は職人さんと相談しつつ、でもある程度はお任せでどんどん据えてもらいます。

これまで土留め石として使っていた石が沓脱石にぴったりだったり、何気なく置かれた石を役石に昇格させたり、使いようによってこんなにも違う表情を見せてくれるものかと驚きます。石を回してどこを見せるのか?次の石をどう添えるか?そういうことを考えるのが楽しいのです。

大変な作業ですがとてもワクワクします。

石組みを再構築。既存の石のほとんどを再利用して据え直しました。石の欠け(欠点)は植物でも補えます。後のことも考えて据えているの。出来上がると全てが染んでいい感じになりました。
据え直した沓脱石、前石、二番石。2番石は新しく入れた石です。犬走りは三和土風にし一二三石で飾りました。犬走りの端っこをまあるくして柔らかい感じにしています。

大きな石組みは力持ちの職人さんに頼り。でも小さな石を並べるのは「マブチさんの仕事な」と強引に振られます(^^;監修する立場とはいえ、私も何かしら手を動かさずにはいられない性分なので、そこは喜んで~。

小さな石というのは、三和土の模様の「一二三石」のことです。

一二三石とは、土間の表面に小石を一つ、二つ、三つとランダムに散りばめるもの。以前何かで見て(修学院離宮かな?)この可愛らしい模様は、女性のお客様の多いお店にピッタリじゃないかと思いご提案しましたら、オーナー様も賛成して下さって実現する運びとなりました。

土のスペースを少なくするご希望もあって広めに犬走りを打ち、それを三和土風にしてもらいました。本物の三和土は砂と石灰・にがりを混ぜたものを、何度かに分けて叩き固めますが、今回は工期が短いため効率よく作るために、パートナーの造園屋さんが白セメントに色粉を混ぜて作ることを提案してくださいました。前もって色々なパターンの配合で小さな試作品をご用意いただきまして、ここに一番合いそうな配合で打設しました。

三和土がほどよく固まりはじめたら、那智黒石を埋めていきます。修学院の場合は色石を並べているそうですが、私は黒一色にしました。並べ方はほとんど直観というか、手の赴くまま適当に。でも時々全体を見ながら、バランスを取って並べたつもり。とはいえ、一定の間隔はつまらないと感じたので、敢えて中央に寄せ気味で端は疎らに。セオリーはあるかもしれないけれど、まぁいいか。

小石を埋め込むとどうしてもそこが窪むので、表面の仕上げの刷毛引きがムラになってしまいます。乾いてから補修をかけると、思いがけず古美た風合いになりました。

大雨の時、庭に水が溜まらないよう暗渠排水工事中。黒いパイプは透水パイプで、近くのU字溝に排水するよう繋ぎます。モチノキの樹勢が凄いので、掘るついでに根の整理もして下さいました。

木塀の足元の処理とか、水はけを良くする仕掛けとか、見えない部分の処理も出来る限り施しました。立水栓を埋設してスッキリさせて、それも店内から見えないように景石で隠したり、とにかくいろんな仕舞いを細かくすると、庭の完成度が上がります。

あと、私の勝手な遊びで、ハート型の石を庭の中に仕込みました。

石を仕入れに行ったとき、何気に見つけてしまったのです。実は私も以前、高台寺でハート型の石を見つけて何故かちょびっとテンション上がった経験があったのでね。

その時は面のある小石をたくさん探すのがミッションで、もちろんそれを真面目に探して、ハート形の石はその際たまたま見つけたのです。

嬉しそうにハート形の石を抱えてきた私を見て、職人さんは呆れたような顔で「それ、ほんまに持って帰るん?」と何度もしつこく聞かれましたが「絶対に失くさんといてね!」とお願いして、特別梱包で持って帰ってもらいました。それで現場に入れる直前に「失くした~」とか言って脅かすんですよ。もぅー。

石を仕入れたときの様子。こんなに一杯ある石の中で、たまたまハート型で手頃な大きさの石を見つけてしまいました。

でもね、いくら何でもこれ見よがしな感じでは使いたくなくて、よく見たら「ひょっとしてハート?」と思う程度に、あくまで控えめに庭の雰囲気を壊さないよう埋めたのです。

お客様にはサプライズで(ダメだったらはずせるから)完成してからお伝えしましたら「可愛い♡いいですね!お店の宣伝に使おうかな」とおっしゃってくださいました。ムフ、遊び心あるお客様で良かった。

この画像の中にハート型の石があります。見つかりますよね??
仕上がった庭。全体の半分程が写っています。手水鉢は縁先に据え直し織部灯籠を寄せました。延段が諸事情で計画より短くなってしまったけれど。いろんな石が集まっていい味を出してくれるといいな。

ゆる音家さんの改装工事が全て完了されて、現在は通常営業されています。お近くにお越しの際は是非お運びください。

参考までにぐるなびのリンクも貼っておきまーす→コチラ

次回は植栽について書きます。

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この記事を書いた人

Dear Garden 代表
ガーデンデザイナー、一級造園施工管理技士

庭づくりを通して感じたことや、最新のガーデン事情、設計について、施工現場の様子、ガーデンデザイナーの暮らしや興味があること、などなど様々なコラムをお届けします。

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