昨今の住宅事情や住まい手の価値観により、庭の必要性に歴然とした差が生まれてきています。生きていく上でどうしても必要な訳ではない、趣向性の高いものなので、万人に受け入れられる存在ではないのは確かで、私もそれは仕方がないと思ってます。
それでも、その良さすら知らない方がいるのだとすれば、早く知っておいて損はないと思うのが庭。今の時代にうまく合わせた設計をして、アピールしていく努力を造園家やガーデンデザイナーはしなければなりません。こう言ってはおごりに聞こえるかもしれないのですが、私はこれまで先代達の培ってきた素晴らしい庭づくりを継承していく途中にいるのです。しっかりやらなければ。
先日立ち寄った書店で、思わぬ掘り出し物を見つけました。「俵屋相伝」18世紀の初頭に創業した宿を受け継いだ11代当主・佐藤年氏の志が綴られていて、四季折々の室礼の様子がとても美しい本です。
伝統を進化させながら、日本旅館の頂点に立っている俵屋さんに学ぶことはとても多い。確か3年ほど前に出会っている本なのですが、当時買おうとしてもモノがなかったのです。もう刷られないのかなぁと残念に思っていましたら、昨年6月頃再版されたようで、晴れて手にすることができました。ヤッター!(((o(*゚▽゚*)o)))
それで、内容から感じたこと…
俵屋さんは京都の街中にある宿なので借景などは期待できない立地。地方の宿に比べたら敷地も広いとは言えないと思います。「市中の山居」だから非日常体験が出来る、癒されるのでしょう。少ない緑や小さな小物でも、背景を作り込むことでそれらが浮き立って見えます。本物の素晴らしさもあると思いますが、古い中でそれらが瑞々しく光っています。四季に応じた「今」がそこにあるから伝統が生きているように感じました。細やかな女性ならではの感覚、自然をもしつらえてしまう感覚というか、言葉ではうまく言えませんが、それが素晴らしい。ここ重要だと受け止めました。
これからも私なりに感じながら、庭というものの素晴らしさを伝えていけたらと思います。よろしければお付き合いくださいませ。